「車両基地(J-24)」はJのコードですので「Jokei(情景)」パーツです。
情景の扱いなのですがセット内には
「ダブルターンアウト(以後:WTO)」レールが含まれていて、
この「WTO」レールは特殊な寸法で設計されています。
当初は意味が分からなかったのですが、とても美しい設計が組み込まれていました。
目次
「ダブルターンアウト(WTO)」レールとは?
まず「車両基地」のセットを組むとこのような形が作れます。
※他、信号機や車止めなどの部品もあります。
このレールの手前2本レールがカーブして出ていく部分が、
「ダブルターンアウト」レール(と呼んでいる)部分です。
※正式名称はありません。
ここの長さが非常に特殊で、2本目(左)のレールの
曲線カーブが開始する位置が、中途半端なのです。
1/2レールや、1/4レール、ジョイントレール(廃版)を駆使しても、
丁度いい開始位置にレールを合わせることができません。
実際、今回3Dパーツとしてモデリングした結果が、
このような図になりました。
やはり、寸法を引くと中途半端な位置から、
左のカーブが出ているという結果になりました。
そして、水色に塗った部分が曲線レールのカーブ終わり部分の
接続位置が、9.5cmの四角形を斜めにした角度(45度)で、
ズレている事を示しています。
現行レールで調整を試みるも、かなり苦戦するWTOレール
この水色の45度回転9.5cm接続部を、
現行(2019年現在)のレールで調整しようとすると苦戦します。
それは現行レールでは作り出せない別の要素が組み込まれているからです。
車両基地は大曲線と曲線レールが接するカーブで設計されている
まずこの形を見て見てください。
ターンアウトからでた曲線レールと大曲線レールが、
180度回ったところで、95mmのズレが反転しています。
そしてそこから内外両方で曲線レールを使っても、
95mmのズレが角度を変えるだけで、保たれています。
しかし、最初に曲線レールを伸ばした内側に大曲線レール、
外側に曲線レールを置くと、最終的にはつなぎ目が合わさっています。
これは何を意味しているのでしょうか。
車両基地の2分岐は大曲線の円と曲線レールの円で構成
元々、車両基地のターンアウトの2本は、
曲線レールと大曲線レールのつなぎ目位置を基にして設計されています。
下の図の左側の絵に表すように、
下側の接点から出た大曲線レールと曲線レールのつなぎ目位置が、
車両基地のつなぎ目に一致する設計になっています。
そこから、内外のレールを入れ替えると、
また同じように重なり、接点の関係になります。
これは「双方の移動距離が同じである」という関係を表しています。
右の図は、その条件を活かして、重なりあうレールに対して、
片方に直線レールを入れ、接点から片方の接続位置を動かしている例です。
1/2直線を入れれば、1/2間隔に。
直線を入れれば、直線間隔につなぎ目の移動ができます。
これは、このように現行のYの字ポイントレールの幅に、
つなぎ目を合わせることができることを示しています。
ただ、実はこれだけでは、
まだ大曲線レールの縦横の移動距離の影響が残ってしまい、
そのままでは他のレールと接続ができない状態になっています。
車両基地の寸法制約を回避するには大曲線レール2本でOK
上では、車両基地から出てYの字ポイントレールで受けていますので、
合流後も、大曲線レールの影響が残ってしまいましたが、
本来大曲線レールの影響を受けているのは左側の分岐だけです。
前述の図の「下側の接点」から上に大曲線レールが伸びている側が、
左ターンアウトだけであることからも分かるはずです。
ですので、合流させることをしなければ、
実は大曲線レールの移動距離を含む左側のみを2本の大曲線レールで、
調整することができます。
車両基地を大曲線レール2本で調整するメカニズム
車両基地の上に、大曲線レール2本を重ねて表示していますが、
上側の移動量(赤点線矢印)を、下側で相殺することでレイアウトが成立します。
上下のレイアウトで同じ長さの矢印を共に入れる事で、
長さが同じレイアウトの形状を作ることができますが、
青矢印は「曲線レールの横寝かせの長さ」と「斜め直線レールの長さ」と同じになっています。
ですので、必要な長さが自然に決定します。
では一番単純に長さを調整したレイアウトの成立例はこのようになります。
上の大曲線レール接続位置と長さがぴったりと合っているのが分かります。
また曲線レールを「斜め直線レール」に置き換えるとこのようなレイアウトになります。
とても単純な事です。
同じ形を入れたレイアウトから、車両基地に重なっていた大曲線を消すと、
このようなレイアウトが見えてきます。(右の8の字分岐の凹凸処理は別途必要)
これ、要は、こういうことなのです。
実に単純です。
「車両基地」+「曲線レール1本」の接続位置の移動距離は、
「大曲線レール2本」の接続位置の移動距離に一致します。
これを活かしてすべてのレールをつないだレイアウトが以下になります。
車両基地で作る大曲線レール円の外形
これは補足のお遊びですが、
上の組み合わせが成り立つという事はどういうことか?
これが成り立つのです。(普通はやりませんよね)
これに大曲線レールを下に敷いて重ねてみます。
形状は円ではありませんので大曲線レールがはみ出ますが、4点の接続位置は一致します。
車両基地でつくる大曲線の円形・「車両基地」レールに隠された設計の美学
CADでこうなるように書いているんじゃないのか?
そうですよね、私が自分で作図して絵にしているのですから、
どうにでも作れてしまうのは当然です。
そうやって、合う形状にしていると思われても仕方ない部分はありますが、
そんな作業する必要はそもそもありませんし、実際同じ事が現実で確認できます。
以下、白黄色などの、カラーレールはすべて曲線レールです。
青いレールが「大曲線レール」を示しています。
「車両基地」のターンアウト4個と曲線レール4本で作る周回ルートです。
これに「大曲線レール」の円を重ねれば、4接続位置が綺麗に重なります。
分解して、大曲線レール2本分の長さを確認します。
「車両基地」自体は円形の曲線は持っていませんが、
開始・終了の接続位置がしっかり一致しています。
もちろん重ねても同じ結果です。
先ほどは「大曲線レール」2本でレイアウトの寸法調整を行いましたが、
最も単純に長さの調整を行う形は、コレです。
いかがでしょうか。
帳尻合わせの為にCGモデリングしたわけでは、
ないのがお分かりいただけるはずです。
むしろ、これが分からないと「車両基地」のモデリングができないのです。
随分、悩みました。
なぜこのような設計になっているのか?なぜこれが成り立つのか?
では、この「車両基地」と「曲線レール」で、
「大曲線レール」2本の接続位置になっているメカニズムをご紹介します。
まず、曲線レールの円と、大曲線レールの円を同心円にして確認します。
このように、どこの間隔を測っても、
「半径の差」である95mmが出てきています。
※大曲線レールとの差が95mmになっているとする根拠は以下。
では、同心円ではなく1点で接する2つの円を描きます。
するとどうでしょうか、接点から延ばした45度直線上に内外円の接続位置が並びます。
そしてその距離が、9.5cm角の45度ズレの位置関係になり、
これは「車両基地」の形状に一致してきます。
そして、接続部の角度が、曲線レールの接続と同じ角度(ここでは水平)で綺麗に並びます。
途中に大曲線のカーブがあってもなくても、
車両基地の接続位置と角度が一致しているのです。
尚、この95mm(9.5cm)という寸法は、
内外の半径の差が常に現れてきますので、
大曲線レールの半径がもし大かったとした場合ここは95mmより大きくなります。
大曲線レール半径が、35cmだったなら、ズレは13.6cm(35-21.4 = 13.6)
大曲線レール半径が、30cmだったなら、ズレは8.6cm(30-21.4 = 8.6)
大曲線レール半径が、25cmだったなら、ズレは3.6cm(25-21.4 = 3.6)
ただそれだけの事です。
※弊サイトでは曲線レール半径は21.4cm(公式には21.6cmです)
誰でも簡単に物差しで辺の長さが測れます。それが、9.5cmです。
結果として「曲線レールの半径+95mm=大曲線レールの半径」であることは、
ほぼ間違いないでしょう。
半径が何でもいいなら「複線外側曲線レール」でいいじゃないか
普通はそう思いますよね、現行パーツである「複線外側曲線レール」で、
同じ法則で60mm間隔でレイアウトすれば、廃版パーツを使わずに済むと。
以下で少し触れていますが、この60mmと95mmとの差、35mmは、
やはりデザイン上の余裕をもたらしてくれると思うのです。
現行の車庫(左)と、廃版の車庫(右)の比較です。
どっちが格好いいでしょうか?
車庫っぽさや、プラキッズを置いて遊ぶにはどっちがいいでしょうか。
実際、60mm設計の車両基地ストップレールは存在しませんが、
もし作るとなると、、、ガーター橋の幅さえ大きすぎる事になります。
これで、車庫感の雰囲気を設計してデザインしても、限界があるでしょう。
95mmという分岐幅は、
子供達が「遊ぶ楽しさ」も盛り込むために、
必要な寸法で採用されたのではないかと思っています。
細部にまでこだわった設計者の心意気
ちなみに、以前このレイアウトを組んだ時に気づいたのですが、
そこに、それ収まるの?という美設計になっていました。
よく見てください、ガーター橋です。
ここに、しっかりガーター橋でさえ、ちゃんとつながる事を想定して、
形の設計がされているんです。
このWターンアウトを設計した人は、
本当に設計が好きなんだなと、こういう細かな所からも感じます。
すごい設計者のプライド(誇り)
このルールさえ守れば、車両基地レイアウトは無限大
大曲線レールの2本分と同じ移動距離を持つ接続位置が取れる。
なので、レイアウトで周回ルートを作る場合、
「大曲線レールの2本分」の移動距離を意識して、
どこで長さ調整をするかを考えるだけです。
長さの調整自体は、以下のようにどこでやっても同じ結果が得られます。
橋脚の避ける位置など、別の条件に合せて、
好きな取り回しの選択ができます。
もし、いまいち分からないようであれば、
以下でも、補足説明をご紹介しています。
何だか急に車両基地レールが欲しくなりませんか?
現行品ですので普通に一般店舗でもAmazonでも買うことができます。
「車両基地」のWターンアウトレールを活用したレイアウトは、
以下で一覧化しています。
最後にオマケですが、すっぽりと綺麗に収まるものですよね。
美しい。。。